タネがなくなる日「地域ブランドのブドウを」毎日新聞


 

毎日新聞 2020/11/25

タネがなくなる日:<中>「地域ブランドのブドウを」 赤字の品種開発 | 毎日新聞

よく晴れた10月の午後。岡山市北区のブドウ園で、林慎悟さん(42)が葉の虫食いを確認していた。「無農薬で育つ品種を作ろうと試しているんです。思ったより被害が少ないな」。新しい品種を開発する「育種家」と農家の二足のわらじを履いている。毎年5月中旬ごろ、ゴマ粒ほどの大きさのつぼみをピンセットで開き、雌しべに別のブドウの花粉を付ける。試す組み合わせは10~20通り。実がなって種が採れれば翌春に植え、育った若木に実がなるまで2~3年。さらに求める味や色、虫に強いといった特性を持つ木を何年もかけて選ぶ。林さんの約30アールの畑のうち3~5アールはこうした育種専用の畑だ。2003~04年ごろに採った種を元に、初めて新品種の登録にこぎつけたのは14年。「マスカットジパング」と名付けたその白ブドウは、大粒・種なしで皮ごと食べられる。栽培農家は県内約150軒に広がり、17年からは本格的に流通する。贈答用なら1キロ1万円以上の価格を付けることがあるマスカットジパング。東京の高級フルーツ店に並び、地域特産品関係の賞にも輝いた。

 

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